<遠距離介護支援交流会>
被介護者の気持ちを斟酌する
2015年2月1日
1.認知症患者は赤ん坊のような存在
(1)認知症患者の周辺症状は赤ん坊の泣き声と同じである
老化現象とは、赤ん坊への回帰
育児が必要な赤ん坊のように、高齢になれば介護が必要となる。
立派な保育施設や優れたベビーシッターがいれば育児が安心なように、
快適な介護施設や優しいヘルパーがいれば介護も安心である。
赤ん坊の泣き声は、
恐い、眠い、お腹が空いた、おしっこ・うんちをしたい等のシグナルです。
育児する人がそれを察知して、すばやく対処すれば泣き止みます。
認知症患者の周辺症状も赤ん坊の泣き声と同じです。
怒ったり、暴力行為をしたり、徘徊したり等の周辺症状は、
寂しい、不安である、攻撃されている、捨てられている等の意識による症状です。
介護する人がそのことを理解して、気配りの介護をすれば周辺症状は消えてなくなります。
(具体例)
四国の実家に戻ってから認知症が進行して要介護度が1~3になり、デイサービスやショートステイを利用し始めた頃、母は施設の利用に際して「誰がこんな施設を作ったのか、もう行きたくない」と抵抗したり、夜間に大きな声を出して「池に入って死にたい、頸を締めて殺して・・・」等と叫んでいた。
その原因は、介護していた私の「母の介護が面倒だ」という心理状態であったと思われる。
(2) 言語や身体能力が低下しても感受性は鋭敏である
記憶力や言語能力が低下する中、感情的能力は鋭敏となる
話す内容よりも、話し方が大切である。
早口で交わされる会話にはついていけず、理解できない。
甲高い声は叱られているように受け止められる。
(具体例)
子供や孫たちとの食事中の会話は、ほとんど聞き取れない、とのこと。
お年寄りには、ゆっくりと優しく話すことが肝要。
介護をする親族に対して、攻撃的な言動をとる要因は、自分が相手から攻撃されているように認知したことへの反作用である。
2.認知症に対する不安
(1)認知症の予兆に対して不安を抱く
忘れっぽくなった自分に対して不安感が増幅してくる>
記憶力の低下と認知症の予兆の区別を理解しておく
記憶力の低下は誰しも起ることであると認識する。
認知症の予兆がみられた場合は、進行を遅らせる投薬治療が必要である。
(具体例)
85歳の時に、実家の三豊市から息子夫婦の横浜に転居した時は認知症の症状はまだ見られなかった、と私たち夫婦は認識していたが、茅ヶ崎在住の妹によれば母が妹夫婦宅で宿泊したとき、鬱状態になったときの母の言動から、認知症の予兆が感じられたとのことである。
私たち夫婦と生活しているときは、一種の緊張状態で意識的に元気な表情を見せる努力をしていた、のかも知れない。
3. 介護施設への反発
(1)日常生活パターンが変更となる介護施設への反発
住み慣れた自宅での生活を、何故させてもらえないのか
要介護度のレベルによって、介護施設の利用日数が決まっている。
要介護度が低い場合には、自宅での生活を中心にして、適宜介護施設を利用。
要介護度が高くなった場合は、特養とか老健施設への入所も検討対象となる。
如何なる場合でも、施設の利用を本人に理解・納得してもらうことが肝要。
(具体例)
要介護度1の時は、デーサービスを週に2回利用し、ショートステイを毎月3日~5日利用していた。
朝、施設に送って行こうとして車に乗車する際、「今日は行きたくない」とか「邪魔なら私を殺してくれ」などの、拒否発言が見られた。
施設に到着すると、ヘルパーさんが元気に迎えてくれるので、愛想笑などで応えているが、「何時に迎えに来てくれる?」「必ず迎えに来てくれよ」と必ず念を押されていた。
人によっては、皆で歌を歌ったり、体操をしたり、散歩に出かけたり、してくれる施設は、自宅で何もせずにじっとしているより、好ましいと思っている方もいるが、
母の場合は、施設で用意していたプログラムに余り興味がなかったようである。
たまに、施設に、幼稚園児や小学生がやってきて、踊りや歌を披露してくれていたが、子供好きの母にとっては、このようなプログラムは大歓迎だったようである。
(2)家族による介護支援体制の構築
親族による介護協力体制が大切である
認知症の親を介護するということは、24時間見守りの生活となること。
介護施設を利用すると同時に、兄弟姉妹で介護を交代すれば負担が軽くなる。
住いが遠方の場合は、交通費の負担との配慮が必要になってくる。
(具体例)
家内や妹たちに、二か月に1回の割合で、母の介護支援に足を運んでもらった。
妹たちが実家の三豊市に戻って、母の介護をしてもらっている間、予定をたてて上京することにした。
家内や妹たちの交通費を賄っていたので、移動コストは2倍になってしまった.
(3)介護施設利用の条件と利用方法
行政機関による介護認定に基づき、介護施設利用の内容が決定される
介護支援1、介護支援2では、デーサービス、ショートステイの利用枠は少ない。
要介護度1から要介護度5に上がるにつれて、介護施設利用の枠は増加する。
被介護者に対する介護計画と実行については、当該地域のケアマネジャーがその責を負い、介護サービスをマネジメントしていく。
ケアマネージャーとの連携・信頼関係が極めて重要である。
(具体例)
母が要介護度1のときは、デイサービスが週に2日、ショートステイが月に1回利用できる状態であった。
行政機関による介護認定は、調査日程を決めて担当者が自宅に来訪し、家族からのヒアリング、本人に対する問診、手足の運動機能のチェックなどを行い、後日郵送で、認定結果が報告される。
介護認定の調査は、毎年1回実施されて、現況の要介護度に更新される。
母は、レピー小体型認知症だったため、その一つの症状として、つんのめるようなすり足歩行がみられたため、何回も転倒して骨折を繰り返した。
骨折のたびに、足腰の衰えが進行して歩行困難な状態となり、車椅子生活になってしまった。
特養に入所する前段階では、排泄や食事の介助が全て必要な要介護度5のレベルになっていた。
(以上、観一19回・長谷川澄治さん執筆)